Fate

人知を遥かに超えたそれはゆっくりとその世界を侵食し、壊し、狂わせ、飲み込んでいく。

苦しみを断ち切るために死を選ぶ者、現実を受け止めきれずに妄想へ逃げる者、もはや何の選択も選ぶことができずに思考を凍り付かせる者―――『混沌』に覆われたこの世界から逃れる為に、

いたい、よ。いたい。たすけて、だれか。

おかあさん、おかあさん。

どうして、どうして、すてたの？

くらいよ、こわいよ。

どうして、どうしてーーーーー

－－－－－－わたしたちは、いらないこ、なの？

▽▼▽

「―――告げる。汝の身は我が下に。我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄る辺に従い、この意この理に従うならば応えよ」

切嗣は英霊召喚の為の呪文の詠唱と共に、全身の魔術刻印がフル稼働していくのを感じた。

魔力と血液を循環させる心臓がこれ以上ないぐらいに脈打っているのがわかる。

燃え続けている巨大な焚火の中心に、勢いよく突き飛ばされたような。まるで肉体の末端から、徐々に灰へと巻き戻されていく感覚。

閉じられた目蓋を焼く鋭利な赤光に耐える事が出来ず、とうとう、乾巧はその目を覚ました。

「痛っ、つぅ――」

人理を守る英雄譚。その一端に触れながら、愛しい男と共に在れる幸せを噛み締めて。この夢が醒めなければと思っていた。

人理保障機関カルデア。

まさに奇跡の塊のような空間であった。魔術においては門外漢である自分達から見てもここまで特殊な世界はないのだと思った。

ーーそ・の・人・理・が・終・わ・ろ・う・と・し・て・い・た・ーーその原因は…核戦争でも小惑星の衝突でも

「誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――！　……ってあれ？」

遠坂凛がサーヴァント召喚の魔術を唱え終わると、目の前に鏡が現れた。

「……何よこれ。

寒い

寒い

遥か先には真っ赤な炎が黒い煙を上げながら燃えているのに。この世界丸ごと飲み込むんじゃないかと思うくらい燃えているのに。私は酷く寒い。

お腹から流れる赤が止まらない。白くなった息もだんだん小さく、か細くなっていく。

腕に抱えたモノをより強く抱きしめ、私は炎をただ眺めた。

最初に謝っておきます、すみません。僕に話せる事なんて殆どないんです。
虎杖君が真人さんに掴まれて、真人さんに「馬鹿」と言われて漸く自分の馬鹿さ加減に気がついて。
そこに急に声がしたんです。

「真昼間から、随分な騒ぎやねぇ」

甘い、声でした。脳天から痺れるような、

昨日から降り続ける雨天も加え、陽の光も届かない高いビルに四方を囲まれた路地裏の奥で、五条悟は瞬いた。
振り向こうとした少女の頭が消し飛び、首から上のなくなった体が軽い音を立て、雨水に汚れたコンクリートに倒れ込む。
びしゃりと水音を立てて、雨粒を吸い込む黒い／赤い水たまり。

「やあ、悪い知らせを持ってきたよキリシュタリア」
「おや、となると君が前々から言っていた者が来たのかい？」

人類最後のマスターだろうか。

世界を救った救世主だろうか。

悪を倒した英雄だろうか。

それとも────殺戮者、あるいは破壊者だろうか。

前世の私と今の私は別人だ。それは当然だろう。だって、藤丸立香は死んだのだ。沢山の犠牲を払って、

片や藤丸立香をマスターとした歴史を創った英雄、サーヴァントの軍勢。

片や門矢士を中心に据えた歴戦の勇士、仮面ライダーの軍勢。

邪竜を墜とした白い長髪の英霊が、竜殺しの力をもって突撃する。
鏡世界に生きる黒い騎士がカードを装填すると、

今やお約束となっている爆発、例によってゼロのルイズの失敗魔法。

だが、今回は奇跡的に上手くいったのか彼女も何らかの使い魔を召喚したらしい。

爆発と共にもうもうと煙が上がる中、その場にいた誰もが固唾を飲んで現れた影を見つめていた。

「お、おい！　あれってオーク鬼じゃないか？」

凛「え？ご、悟空？」

悟空「おう！孫悟空だ！」

凛「西遊記の？」

悟空「西遊記？なんだそりゃ」

凛「天竺にお経を貰いに…」

悟空「天竺ってなんだ？うめぇのか？」

凛(どうしよう…)

凛「え、えとね。私たちは聖杯戦争という物をしていて」

悟空「聖杯？なんだそりゃ？」